講演会「発想力」レポート
安藤忠雄さんの講演会『発想力』へ行ってきました。
※写真は会場でいただいたサイン本。
安藤さんの講演会に行った事のある方は想像に難くないかと思いますが、お喋りの延長の様なユーモア溢れる講演会で、
‟夕飯を食べた後で眠くなりはしないだろうか”なんて心配も吹き飛ぶ約2時間でした。
最初からの安藤節。
「人生思うようにいかないもの」と示しながら
‟今日は台風で講演がなくなるのではと思ったが、そういうのも面白くていいんじゃないかと”
と言い始めまして。予想の斜め上の導入話に会場全体がひと笑い。
そして新国立競技場の裏話が始まり、一気に会場全体が安藤ワールドへ飲み込まれました。
しかも「何事も覚悟」とした上で、闘病についての驚きの話も飛び出します。
普通なら暗くなる様な内容ですが、あまりにもあっけらかんと話すので、何がどうして泣けるものかわからなくなる安藤さんの不思議なトーク力。
「目標」があれば長生き出来て、いつでも青春なのだとか。
そして本題である「発想力」のこと。
「私たちの脳は老化する。」
「組織も老化する。」
この2つのキーワードから始まり、直島のプロジェクトを取り上げながら繰り返していた、「次々と考える」という言葉。
‟今の子は、本は読まず、朝食は食べず、昼夜は保存料を食べ、長生きしないので年金の心配はありません。”
と、またもやブラックな笑いを混ぜてくる訳ですが、
知識を身に着けること、必要な栄養を摂って体力をつけること、生きる中で目標を見つけ、目標に向かうことは、人間が持ち得る特権だと感じました。
途切れる事の無い安藤さんの語りを聞いていると、ああ、安藤さんは体力の基盤があって、
脳は常に回転して、いつまでも若々しく老化知らずでいられるのだな、と妙に納得させられます。
私たちは、感動したり、腹を立てたり、目標を持って生きるべきなのだそうです。
後半は、水の教会や頭大仏の話しがメインで、
「その土地でしかできない環境を活かしたデザイン」の着想について。
施主との裏話は、大体が冗談に様に聞こえてくるので会場は笑いに溢れるのですが、安藤さん本人は至って真面目で、完成したものは確かに目論見通りの仕上がり。
ただただ、感嘆するばかりでした。
全体の話の流れはこういった様子で、他の講演会でも話している事と重複もしている部分もあると思いますが、
私が今回の内容で一番良かったのが安藤さんとプロジェクトで関わる人との繋がり。
どんな流れで出た話だったか、
おばあさんからお野菜をもらったお礼に‟100歳まで元気で”と手紙を送ったら、もう98歳だった!という笑い話。
その後の手紙は”110歳まで”に延長したとか。なんて微笑ましい。
それから、大阪のたこ焼き屋の看板を頼まれて字を書いたそうですが、それだけじゃつまらないとタコのイラストでボードを作ってしまったり。
しかも店長もおかみさんもタコそっくりでしょとまた笑いを混ぜてくる。
安藤さんから語られるたくさんの方々は、時には毒づいた批判が混ざり、時にはいじり倒される。
でも楽しそうで、この人は人間が好きなんだろうなと感じられます。
そうして、関わる方々の人柄や考えの背景が見えるとたちまち、1つ1つのプロジェクトの当事者であったかの様に動きだして見えてくるのでした。
そんなこんなであっという間に講演会は終了。
改めて、建築は建物を建てるだけが目的ではないなと改めて感じました。
そしてTPOが関わる建物たちもその1つ。
また1歩、建物と近づけた気がする講演でした。
by hirabayashi